ペロペロキャンディーと戦後65年の歴史

仕事に明け暮れていたある日,出先からの帰り道,駒込の商店街の片隅にある純喫茶タンタンという店にフラリと入店しました.純喫茶という名称に含まれる「純」の部分に,純粋数学,純粋関数型言語といったものに感じるものと同じ青春の香りを感じてしまい,見つけるとついつい入店してしまうのです.オシャレ外資カフェにはない純喫茶特有の感覚にすっかり惚れてしまっているのかもしれません.
さて,このタンタンですが,かなり御高齢でありながら非常に快活な女性が一人で切り盛りされており,住居兼店舗の自社テナントビルの1階に自ら入居されているとのこと.僕のホットコーヒーが無くなると,有無を言わずにいくらでも継ぎ足してくれます.コーヒーにはあまり合いませんでしたが,とてもおいしいミカンまで頂きました.初めて来た場所であるにも関わらず,まるでもうずっと昔から通いつめた場所であるような,そんな気すらする不思議な空間で,コーヒーを飲みながら,店主との話は,戦後復興の話から,タンタンの由来(店主のアダ名のようなものらしいです;今となっては先進的な呼ばれ方すぎる),浮気性の旦那の話,純喫茶が溜まり場だった時代の貧乏下宿学生達の今昔,彼ら全員の「母親役」だった時代と,その空気感,仕事や人生への向き合い方まで.意図せずコーヒーを何杯も頂いてしまうことになりました.
地下のテナントにはソロバン教室が入っているそうで,通ってくる子供たちに,いつもペロペロキャンディーをあげているのだそうです.さすがに次のスケジュールがギリギリになってしまった帰り際,僕もペロペロキャンディーを頂戴することになり,彼女から見れば,僕もソロバン教室の子供達も,ほとんど変わらないようなものなのだろうなぁと,そんな些細なことで,歴史の重みなんて言えば大袈裟すぎますが,そんなことを不意に感じた,純喫茶タンタンでした.
みなさまもお近くにお出かけの際は,(その時間に運良く開店していれば)ぜひ一度,行ってみることをおすすめいたします.

純喫茶タンタン
東京都文京区本駒込1丁目3-14 ビル 1階
開店時間・休業日 不定期(店主の気分次第)